ドーナツといえば真ん中の穴ですね。この穴、いったい何のために開いているのか?
穴の部分も生地だったらもっとたくさん食べられるのに、なんとなく損しているような…。などと思ってはいけません。ドーナツは穴が開いているからこそおいしいのです。
ドーナツの祖先はオランダの「オリーボーレン」(オリークックなどともいう)という揚げ菓子。これはボール状で穴は開いていませんでした。沖縄のサーターアンダギーが近いかもしれません。このお菓子がイギリス、さらにアメリカへ伝わり広がっていきます。

オリーボーレンは真ん中にクルミが載せられていたため、英語で「dough nut」(生地とナッツ)と呼ばれるようになり、この「ドーナツ」という言葉が定着していきました。
ドーナツに穴を開けたのはハンソン・グレゴリーという船員さん。諸説ありますが火の通りを良くするために生地に穴を開けたところ、これが大人気に。
生まれ故郷のメイン州には記念碑まで建っているとか。それだけ「ドーナツの穴」は偉大な発明だったということですね。
ではもしドーナツに穴が開いていなかったら?

「う〜ん…まだ揚がらないわねえ。でも表面が焦げてきちゃったし、さすがに揚げすぎな気もするし、もういいかしらねえ」
「ちょっと油っぽいわあ。なんだかべっとりしちゃって…ん?あらやだ!中はまだ生じゃないの!もう困っちゃう」

こうなります。
ドーナツに穴を開けることで表面積が広がり、それだけ火が通りやすくなって揚げる時間が短くすみます。ドーナツを軽くさっくりと仕上げるために、あの穴は効果絶大なのです!
ドーナツの成り立ちとは関係ありませんが、僕が大学生の頃、住んでいた寮にドーナツ屋さんでバイトしていた先輩がいました。

この先輩、バイト帰りによくドーナツをお土産に持って来て、寝ている僕達の枕元に置いていってくれたので、「サンタ」と呼ばれていました。
体型はサンタよりもむしろお正月の鏡餅みたいでしたが。
鏡餅先輩は真冬でもゴムの切れたハーフパンツを履いていたため、常に腰に手をあてて威張って歩くスタイルで過ごしていました。
なぜそこまでして履き続けていたのかは謎ですが、なにかとても愛着があったのかもしれません。
見ているこちらは手を離したら大変なことになるとハラハラしていたものです。

ある時、鏡餅先輩を含む寮の何人かで旅行に行ったことがありました。
その夜、突然すごい音が部屋中に響き渡りました。
「いったい何事か!?」
僕が目を覚ますと、他にも何人か起きています。
音は一回ではなく、どうも定期的に鳴っている様子。
暗がりの中、起きた人々で音の出所を探索します。

音源はすぐに判明しました。
そう、鏡餅です。
なにかと思ったら先輩のいびきだったんですね。
それにしても凄まじい音量である。人間とはこんなにも大きな音を出せるものなのか。しかも無意識に。
例えるなら部屋の中を機関車が走っている、そんな感じです。

人体の神秘を身にしみて体感できたのはいいですが、なんせkikansya級の爆音です。我々はまったく眠ることができません。
ここは一発、先輩の鼻の穴にハニーチュロを突っ込んで静かにさせたい、本気でそう思いました。
手近なところにチュロがなかったため、この「鼻チュロ作戦」が決行されることはありませんでしたが、今となってはそれで良かったと思っています。
鏡餅の鼻の穴に突っ込まれる運命など、チュロとしても望んでいないでしょう。

その後、我々は廊下の談話コーナーへ退避してしばらく過ごしていましたが、そこで一夜を明かすのも辛いものがあり、結局部屋に戻りました。
やはりまだ鏡餅機関車は元気一杯に走り続けていました。
いったいいつになったら止まるのだこの機関車は。ひょっとして止まると爆発するのか?そういえばそんな映画を見た気がする。
人は列車の中だと眠れるのに、すぐそばを列車が走っていると眠れないことがわかりました。

翌朝、元気だったのは鏡餅機関車先輩ただ1人でした。
無理もありません、みんなほとんど寝てないのです。
先輩に悪気はないとはいえ、鏡開きの如くその腹をカチ割ってやりたいと思ったのは僕だけではなかったはず。
なんだか話がドーナツからかけ離れ、おかしな方向に脱線してしまいました。
それもこれも鏡餅機関車が暴走したせいである。どうか許していただきたい。