ガレットから生まれたクレープ

みなさんはクレープ屋さんがクレープを作るところを見たことがありますか?

僕はあります。あれは面白いですよね。
まず焼く台が円筒形の独特なもので、「私はクレープを焼くために生まれてきました」という存在感を強烈に放っており、ある種の貫禄すら感じます。

だけど最も驚くのはその焼き方。生地をレードルでひとすくい、台の上に落としたら、T字型の道具(グラウンド整備に使うトンボを小さくしたみたいなやつ)をクルクル回して生地を広げるんですね。僕はオタマの底かなにかで広げるのかと思いきや、まさかあんなやり方をするとは。

焼けたらクリームやフルーツを巻いて、はい、できあがり。

クレープ屋さんはプロですから、これらの作業を淀みなく流れるようにこなしていますが、初心者がやろうとしたら相当に難しいと思います。
もし僕がやったら生地を台からぶちまけ、焼く時に穴を空け、巻くのに失敗し、最終的に「これ何?」という奇妙な物体を生成してしまう恐れがあります。
これはクレープへの冒涜と言うものです。

今はお菓子としての色合いが強いクレープですが、なんと元々は救荒食だったのです。
材料に小麦粉ではなく、痩せた土地でも早く育つ「そば粉」を使っており、卵や砂糖も使わず水と塩を加えただけの質素なものでした。

「それはガレットでは?」と思ったみなさん、そのとおりです。クレープはガレットから派生したものですね。
ガレットはフランス語で「石」を意味する「ガレ」が語源。昔々、そばのお粥を焼けた石の上に落としたらうまく焼けておいしかったのだとか。卵やハム、チーズなどと一緒に食べることが多く、こちらは「食事」といった感じですね。

「でもクッキーみたいなお菓子のガレットもあるのでは?」と思ったみなさん、そのとおりです。鋭いですね。

そう、ガレットにもいくつかの種類があるのです。
例えば、よくお菓子屋さんで見かけるクッキーみたいなやつは「ガレット・ブルトンヌ」(ブルターニュ風ガレット)ですし、「ガレット・デ・ロワ」(王様のガレット)はパイ生地でアーモンドクリームを挟んで焼いたものです。

同じガレットなのに、なぜこんなにも違うのか?
それは「ガレット」という言葉はフランス語で「円くて薄いもの、円盤」という意味があるからなのです。確かにじゃがいものガレットなんかもありますし、とても懐が深い料理なのですね。

「それでもガレットとクレープってだいぶ違うのでは?」と思ったみなさん、そのとおりです。そろそろ勘弁してください。

ガレットは元々フランスのブルターニュ地方の郷土料理だったのですが、国王ルイ13世の妻であるアンヌ王妃がブルターニュを訪れた時、そこで食べたガレットを気に入って宮廷料理に取り入れたのだとか。

これは1600年代のお話ですが、時が経つにつれそこに卵や砂糖、クリーム、フルーツなどが加えられ、豪華になったものが「クレープ」(フランス語で「ちりめん=縮んだ織物」の意味。ちなみに英語でも「クレープ」)と呼ばれ区別されていきます。

僕は人生でクレープを食べたことがほとんどないので、せっかくだから今度食べに行きたいと思います。(つづく)

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